「憂鬱な朝」日高ショーコ レビュー

全8巻、紙ベースにて購入、一気読みしました。

BL読書歴は長いものの、この10年は離れていましたが、引きこもり生活中に復活。

とりあえず発行部数の多いもの、人気が高い作品を中心に再度腐女子生活に突入した次第です。

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憂鬱な朝第一巻

以下は一回目読了時の感想となります。

 

読後直後の感想

深い。
切なくてやるせなくて、何度も胸が張り裂けそうになった。
最終巻は後半ほぼ泣いていた。てか涙が止まらなかった。
終盤はひとコマひとコマに涙が追加で溢れていた。
心臓の鼓動の速さが収まらない。
下手するとまた涙ぐむ。
これは相当にヤバすぎる。

 

 

 

はい、言葉が全く出てきていませんねー

なので小一時間後の感想が以下です

ネタバレなしです

 

読後小一時間後の感想

 

「キレイな男性を描けば読者はつく」とは浦沢直樹先生のお言葉である。
BLにはほぼ、多分99%以上「きれいな男性」がメインで登場する。それも複数人。
それだけアドバンテージが有るのだから、大体のBLマンガは苦痛なく、読める。
面白い作品も多い。
が、「…良かった!」と思える作品は稀有である。

一昔前までBLは同性だというだけで恋愛話には欠かせない障害がデフォルトで存在した。
だが昨今では同性愛に対する世間の理解が急速に拡がるという、とても良い時代になった。
なので同性というだけでは切ない障害には成り得なくなった。
そこで作家は更なる障害を作り、ひねり、ひっくり返し、美男子たちを弄び煩悶させねばならなくなった。
美しい男が悶絶する姿は腐った者にとって至上の御馳走である。
浅いと感じる作品は、事象に対するキャラの悶絶描写が稚拙である。または事象自体が拙い。
深いと感じさせるには、画力は勿論のこと、キャラの思想、立場、背景からバックボーンに至るまで齟齬なく練りこまねばならない。

この作品はさらに時代考証までやってのけている。
背景は序盤から徐々に複雑さを増していき、登場人物は翻弄されるが、自らの才覚と努力によって問題を解決し収束させる様に深い感動を覚える。
背景は複雑だが、主人公がぶれずにひたすら一途なので理解しやすく読みやすい。
しかも、よくあるただ一途な馬鹿ではなく、年とともに賢さと胆力を備えていき、話を根底からひっくり返すダイナミックな表現を可能にしている。
もちろん「攻め」である。

さて、この作品の「受け」はどうか?
「受け」は大体が切なさ担当である。そうであったほうが萌えるものである。
そしてハイスペックで不遜、一見隙がなく泣き顔も笑い顔も寝顔も(もちろん萌え顔も)想像もできないようなキャラが良い。
さらにサイコパスっぽさでコーティングしているが脇が甘く、善性がチラリと漏れ出すのが良い。
これが全て当てはまっている。
まさに婦女子心くすぐりまくりの特上キャラであるのだ!あるのだ!(大事なことなので)

さて、「攻め」と「受け」のキャラクターがしっかりと立っているので、ストーリーが軽くてはイケない。
BLを読みにくるほとんどの腐女子腐男子の皆さまは、エチシーンを期待されてのことでしょう。
せっかくのエチシーン、どうしてそうなったか?何が引金だったか?事に至るまでの心理たるや如何なものか?
そこをテキトーに描いてしまってはせっかくの美味しいモノも無駄になってしまうというもの。
もうね、この作品、全てのエチシーンの意味合いがそれぞれ全く違っているのである。
置かれた立場、心情、背景が全て違うので、全エチシーンが毎回すごく新鮮で切ない。
そしてここでもぶれないところが一か所、
それが表題の「憂鬱な朝」である。
終盤にさしかかった頃、この表題の意味に気づいてじんわり涙ぐんでしまった。
さらに一巻と最終巻の表紙を改めて見比べて涙腺決壊。

ことごとく心を配られた特上で特別で最高な名作であると断言する。
レビュー書いてるとまた涙出てきたよ。